バーニングマンとは砂漠に1週間だけ街を作るイベントだ!というのは、およその認識として合っています。とてもユニークな街なので奇祭だとか無礼講だとか書かれる事が多いですが、普通にアメリカの法律にのっとった生活もしています。
暑い時は裸に近い人が多いけれど、何でも出来る治外法権ではありませんし、海外からの参加者であっても同じ法律が適用されます。書き連ねたらキリがないのですが、日本では法律があっても運用が緩かったり、アメリカなんだから自由だろうと勘違いしてそうな部分を重点的に挙げておきます。違法行為として取締りや罰金の対象になるものだけでなく、社会的に容認できないものまで含みます。
※バーニングマン イベント期間中のネバダ州のブラック ロック砂漠内での活動に適用される法律および規制に関する情報等を掲載しています。法的情報は法的助言ではありません。ここに記載されている情報の正確性と有用性を確保するよう努めていますが、特定の状況について法的助言が必要な場合は、弁護士に相談してください。
道路交通・運転に関して
- 飲酒運転(DUI)の罰則が厳しい
血中アルコール.08%の酒気帯び運転は罰金等のほか、留置場に最低2日入れられる。 - オープンコンテナも取締対象
車内に開封したアルコールがあると違反になる。助手席、後部座席、仕切りのないトランク等を含む。特に帰り道は開封したアルコール類をそのまま持ち帰らずに処分したほうが良い。 - 救急車のサイレンが聞こえたら停車する
反対車線も含めて聞こえる範囲は即停車。全ての車が停車している中を猛スピードで走り抜けるので、救急車両の全てが通り過ぎて安全を確認出来るまで動いてはいけない。
会場までの道のり
- フリーウェイ80降りた後のハイウェイ447の路肩は原則駐車禁止
駐停車可能なエリア以外は駐停車禁止。また緊急時であっても路肩が柔らかく、スタックや横転しやすいので駐車しないほうが良い。何もない平野だと思っても私有地なので侵入してはいけない。 - 法定速度の変化が大きい
ハイウェイ447を走っていて街に入ると急に法定速度が下がる。取締りポイントの1つ。 - カウンティロード34の路肩は駐停車禁止
最後の最寄りの街ガーラックを出て34号に入ってからバーニングマン会場入口までの10キロは駐停車禁止。取締りポイント。 - キャンプ地に着くまでの道も取締対象
チケットを受取って入場受付を済ませてからキャンプ地までの道は、砂漠に旗が立っているだけのイベント用の道路だが公道と同じように取締にあう。到着した安心感から車内で酒盛り等を始めて捕まった参加者をよく見かける。 - 会場内の制限速度は時速5マイル
時速5マイルといえば人が歩くのと同じくらい遅いが、スピード違反は公道同様に切符を切られる。ついでに車内捜索されたりして、罰金250ドルの例も。
会場内でのお行儀に関して
会場内では子供と、プラヤ(会場の土壌)と警察関係者にはリスペクトを払いましょう。一般的に子供には見せられない姿はパブリックな場では控えると思えば…といっても、何がどこまで見せられない姿なのか、どこからがパブリックな場なのか最初は判断が難しいところではあります。それぞれ行為にふさわしい場が様々に用意されている会場なので、周囲の環境に配慮しましょう。
- 公然猥褻
裸で歩き回るくらいは特に問題ない。人前で性的にアクティブな行為に及ぶと警察沙汰になる前に通行人等に声をかけられたり、レンジャーを呼ばれたりして、ご遠慮いただく事になる。 - 21歳未満へのアルコール提供禁止
まず、未成年の飲酒に関して日本はかなり緩い。アメリカでは年齢確認をせずに未成年にアルコールを提供した側が罰せられる上、それがギフトのアルコールでも同様である。バーをやっているテーマキャンプに限らず、抜き打ちで取締をしている捜査官が「ちょっとお酒くれない?」とプライベートなキッチンに入ってくる場合もある。他人にふるまう際は慎重に。 - プラヤでの排泄
日本では立ち小便についても緩い。バーニングマン会場の平地「プラヤ」は自然保護対象でもあり、見つかれば罰金。会場には仮設トイレが大量に設置され、毎日汲み取りと清掃が行われており、夜は青いライトを頼りにすれば見つかる。
違法薬物関連
日本ではドラッグに関する教育の機会もなく、知識のアップデートもしていない人がほとんどという事がアメリカでは理解されません。知らなかったでは済まないので「アメリカでは解禁されているらしいから試してみるか〜」ぐらいの雑なイメージで手を出さないよう注意しましょう。
- バーニングマン会場内でマリファナは違法薬物
ネヴァダ州は嗜好用大麻が解禁されたが、バーニングマンの会場は連邦の土地。連邦法では医療用も含めてまだ違法薬物のままである。おおっぴらに楽しむと速攻で逮捕されるし、外国人でも同様である。より大麻を受け入れているヨーロッパ人や他の州出身のアメリカ人でも時々勘違いしているむきがある。 - 会場内に5種類の警察機関がパトロールしている
連邦土地管理局のBLMレンジャーを中心に、特にサウンドキャンプやダンスフロアを24時間体制で見張っている。そもそも辺境の砂漠に配備されている人数は少ないので、バーニングマン期間中はネヴァダ州全域からの応援をかき集めて重点シフトを敷いている。 - BLMレンジャー以外の地元所轄にも逮捕される
ネヴァダ州は1オンスまで大麻の所持が可能だが、プライベートな空間以外での摂取は違法。そして荷物検査のついでに様々な薬物が見つかった場合は種類と量によってトラフィッキング(取引用)とみなされてぐっと罪が重くなる。 - 制服警官以外にも覆面捜査官のおとり捜査がある
普通の参加者と同じ格好で「何かない?」とか聞いて友達っぽいふるまいをする覆面捜査官も投入される。バーニングマンは警察の訓練用フィールドとして丁度良いので単純に匂いをたどったり暗視スコープで人の輪をチェックするほか、様々な工夫を試している。 - 犬は全部警察犬
バーニングマンはペットの持ち込み禁止なので、会場にいる犬はほぼ警察犬しかいない。
性的同意とコンセント
バーニングマンでは性にも解放的でいろんな体験が出来るというイメージを持たれているようです。でも、ちゃんと相手の意思を尊重して同意を得る手順を踏んでない場合は、ハラスメントとして通報されても仕方ありません。なんだか窮屈に思う、どうして言葉で確認しないといけないのか分からない、MeToo運動は自分と関係ないと思う人はこの有名なお茶の例えで説明した動画を見てください。
- 性的合意は必ず言葉で得る
Noと言わなかったからOK、雰囲気的にOK、裸だったからOK、寝てたからOKといった状況判断では性的同意とみなされない。必ず口頭で聞いてYesをもらう。そしてNoと言われたらNo。最初はYesで、途中からNoになってもNo。嫌よ嫌よも好きのうち、ということわざは法律の前には無力。流れをぶったぎってもYesの言質をとるべき。 - 相手の性別年齢に関わらず同意を得る
性的同意は相手の性別や年齢といったバックグラウンドから「なくても良い」と判断して良いものではない。また日本人相手だから忖度してもらって当然というものでもない。 - 相手が同意出来る状態である事を確認する
酔っていたり、眠っていたり、体調が悪かったりといったような正常な判断が出来ない時のコンセントはカウントしない。また、未成年は本人がどう言おうとも同意を出来る年齢ではない。日本では性的同意年齢は13歳だが、アメリカでは16−18歳。アメリカで未成年への性的いたずらは拘置所直行の刑事事件になりえるので一大事。 - 性的な交流に限らず、ハグや飲酒、ドラッグに関してもコンセントを得る
その場の雰囲気や自分の固定観念で相手に行動を強いる事のないように。そして参加したくないものに誘われた時は、シンプルに「No」と答える事で相手も救われる。 - テーマキャンプの催し物のルールを尊重する
ボディタッチ等を含む大人向けワークショップや催し物のテーマキャンプには、必ず入場前にコンセント(同意)等の説明がある。同行者も内容を理解しているのか、他の参加者を尊重できるか、説明されたルールを守って皆が安心して参加できる空間をサポートするよう求められる。 - 写真を撮る時も必ず撮る側が事前にコンセントを得る
裸の写真に限らず、眼の前の人間を写真に撮るのに何も声をかけないのは失礼。「写真撮って良い?」と一言聞くだけでコンセント(同意)を得られる。たとえメディアでも必ずコンセントをとる義務があるので、首からさげているメディアパスを確認して各自で判断のこと。
警察に止められたらどうすればいいのか
アメリカの警察に対峙したことのある人は多くないと思いますが、対応と必要なセンテンスを知らない場合は濡れ衣でも手順にのっとって逮捕されてしまうし、それは外国人でも関係ないです。警察に止められた時の対応をおさらいしておきましょう。
- 下手に逆らわない、名前を聞いたら本名を応える
まず落ち着いて、警察の話しを聞く。名前を聞かれたら本名を応える。IDを持っていたら見せる。アメリカ在住ではない外国人の場合は身分証明となるパスポートを持ち歩いていなくても問題はない。 - 任意の捜査には同意しないで構わない
日本の職務質問と同じで、任意での捜査には応じる必要はない。“I do not consent to a search.”と答える。 - 勝手に立ち去らない
一旦立ち止まって口をきいた後は用事が終わった、自分に関係ない、無実である、などと勝手に判断して立ち去ってはいけない。逃亡の意思ありとみなされ現行犯逮捕する理由を与えてしまう。違反切符を渡された場合も、受け取ったら、必ず”Am I free to go?”と確認すること。”Yes”と言われたら立ち去る。
“No”と言われた場合には”Am I been arrested?(私は逮捕されたのですか)”と聞く。逮捕されてないのであれば勾留される理由はないので”Am I free to go?”とまた聞く。以下繰り返し。 - 逮捕された場合は黙る
アメリカで警察が”You are under arrest”と言った場合は、理由が分からなくて聞き返したり、反論して暴れたりしても翻る事はなく逮捕。逆にこのセリフを口に出していない場合は逮捕とはいえない。また、抵抗したり口ごたえをすると、後に自分に不利な証言をとられやすいので落ち着いて“I do not consent to any search. I hereby invoke my right to remain silent. I want to speak to my attorney.” と唱えてから黙秘する。 - 警察とのやりとりを記録する
警察に止められている間は相手の制服の色やタグの名前を記憶する。警官は嫌がるが、写真や動画を撮って記録する権利もある。そして、やりとりを終えた後にはセンターキャンプでLaw Enforcement Feedbackを記入すれば、コミュニティとの情報共有というギフトもできる。 - バーニングマンに詳しい弁護士に連絡する
会場内で罰金や逮捕など警察のお世話になった場合は、バーニングマンに参加経験のある弁護士のグループ”Lawyers for Burners“が経験豊富で頼りになる。
トラブルがおこった場合には
迷子や救急などの普段の生活で110番や119番を呼びたいような場合は、会場内見回りボランティアの”Black Rock Ranger”を頼りましょう。カーキ色の帽子やシャツを着用し、バーニングマンのロゴをつけて2人組で会場全体をくまなく24時間パトロールしています。警察を呼ぶまでもないような困りごとでも構いません。
警察が必要なトラブルの際も、レンジャーが間に入って関係各所と連携して親身に対応してくれます。黄色いシャツに”Emergency Service”と書いてあるのが救急・消防担当”ESD“で、レンジャーと同様、会場内では3時、6時、9時にステーションがあって連動しています。
トップ画像(photo by Kerotan 2019)の答え:
赤い矢印の3人がBlack Rock Rangerの3人でした。普段は目立たないようにしていて、必要な時にダストの中から現れて寄り添うのが理想とされています。必要な訓練を受けて選考に残ったボランティアで構成されていて、1日8時間勤務をこなす体力もあります。どんなトラブルも大事になる手前で柔軟な解決に導けるようにウロウロしています。経験値の高い参加者でもあるので、気軽に話しかけてみてください。
”Rangers rise from the dust to ride the edge of chaos, then disappear into the whirlwinds.”